収益不動産を民事信託するときの注意点|不動産所得の赤字・損益通算を信託前に確認|戸塚区・泉区・栄区の不動産登記や相続手続きは、司法書士安西総合事務所にお任せください。

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収益不動産を民事信託するときの注意点|不動産所得の赤字と損益通算

アパートや賃貸マンションなどの収益不動産は、将来の認知症対策として民事信託(家族信託)を検討することがあります。

収益不動産を民事信託する場合、「誰を受託者にするか」「賃貸管理をどうするか」「将来売却できるようにするか」といった信託契約の設計はもちろん重要ですが、収益不動産については、その前に確認しておきたいことがあります。

その不動産から生じている「不動産所得」が、黒字なのか、赤字なのか

ポイントは、収益不動産を信託することによって、それまで利用できていた不動産所得の損失について税務上の取扱いが変わる場合があるため、注意が必要です。



税務上の整理:会社から配当金を受領するのは株主である受託者ですが、通常の受益者等課税信託では、信託財産に帰せられる収益は現に受益者としての権利を有する者に帰属するものとして扱われます。受益者が複数いる場合の所得配分、源泉徴収・申告、受益権の相続税・贈与税評価は、信託行為の内容により異なるため、事前に税理士と具体的な確認が不可欠です。

1.不動産所得の赤字は他の所得と損益通算できる

税務申告にあたっての不動産所得の考え方 個人が所有する賃貸マンションやアパートについては、基本的に家賃などの収入から必要経費を控除して不動産所得を計算します。その結果、損失があれば、原則、他の所得(事業所得や給与所得)との損益通算が認められています。

例えば、
  • 不動産所得 ▲300万円
  • 事業所得 1,500万円

この場合、不動産所得で生じた損失▲300万円を、一定の例外を除き、事業所得 1,500万円事業所得と損益通算することで、全体の所得を1,200万円と計算することができます。また、青色申告者については、損益通算しても控除しきれなかった純損失について、一定の要件のもと翌年以後3年間の繰越控除が認められています。

つまり、不動産所得の赤字を他の所得と損益通算することで・・・・、これは、不動産オーナー全体の所得税負担を考えるうえで重要な要素となっています。

2.【重要】キャッシュフローは黒字でも、不動産所得が赤字の場合

ここで収益不動産について注意したいのが、税務上の不動産所得と、実際のお金の動きは一致しないという点です。

例えば、ある収益不動産について、年間の収支が次のとおりだとします。
  • 家賃等の収入 3,000万円
  • 現金支出を伴う経費(出費) 2,000万円
  • この場合、単純計算で手元に残る現金は1,000万円となります。
    しかし、会計上の計算がこれに一致するとか限りません。
    その典型が、減価償却費です。
    これは、・・・・・
    仮に、減価償却費を除いた会計上の必要経費が、1800万だったとして、

    税務上の不動産所得は、
    3,000万円−1,800万円−1,300万円=▲100万円

    となります。

    減価償却費1,300万円は、その年に1,300万円の現金が出ていく費用ではありませんが、会計上、必要経費として計上することが認められています。


    つまり、単純化すれば、この不動産は年間1,000万円のキャッシュを生み出している一方で、税務上は100万円の赤字を計上していることになります。


    キャッシュフローは黒字、不動産所得は赤字



    収益不動産では、建物や附属設備について相応の減価償却費が生じるため、キャッシュフローは黒字でありながら、税務上の不動産所得は赤字となるケースがあります。


    そして、その不動産所得の損失を、事業所得や給与所得などとの損益通算に利用している不動産オーナーもいます。


    したがって、確定申告書に「不動産所得▲300万円」と記載されているからといって、直ちに「この不動産経営では300万円の持ち出しが発生している」と判断することはできません。


収益不動産を民事信託すると、この赤字の取扱いに注意が必要

ここで民事信託特有の問題が出てきます。

個人を受益者とする一定の信託について、信託財産である不動産から生じた不動産所得の損失は、税務上「生じなかったもの」とみなされます。

したがって、信託前には他の所得との損益通算に利用できていた不動産所得の赤字が、信託後には同じように利用できなくなる場合があります。
そのため、

「物件はキャッシュを生んでいる。一方、減価償却費等によって税務上は不動産所得の赤字が生じ、その赤字を他の所得との損益通算に利用している」

という不動産オーナーにとって、収益不動産を民事信託することは、物件の収益性そのものを変えなくても、税務上大きな影響を与える可能性があります。

そこで安西総合事務所では、アパートや賃貸マンションなどの収益不動産を民事信託する場合、信託契約の内容だけを見るのではなく、その不動産から生じている所得の状況を確認することも重要だと考えています。

入口として直近3年程度の確定申告書を確認
その入口として確認しておきたい資料が、直近3年程度の確定申告書や青色申告決算書(不動産所得用)です。

例えば、次のような点を確認します。

不動産所得が毎年黒字なのか赤字なのか
減価償却費がどの程度計上されているのか
借入金利子や修繕費がどの程度あるのか
今後、大規模修繕や設備更新の予定があるのか
資本的支出によって今後の減価償却費が増える可能性がないか
過去3年間が黒字だったからといって、将来も黒字とは限りません。

反対に、過去に赤字が生じていても、一時的な修繕費などが原因であれば、今後も同じ状態が続くとは限りません。

そのため、過去の確定申告書は「信託によって税務上の問題が生じないかを発見するための入口」として利用することが重要です。
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