登記識別情報を提供することができない正当な理由とは
不動産登記の申請において、登記義務者は原則として登記識別情報を提供しなければなりません。もっとも、実務上は、登記識別情報を提供することができない正当な理由がある場合もあります。以下、基本的な整理を確認します。
※本記事は2008年当時の実務整理をベースにした内容ですが、現在でも基本的な考え方を確認するうえで参考になる部分があるため、実務上の補足を加えて再掲しています。
■ 登記識別情報を提供することができない正当な理由とは
不動産登記法では、登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合には、申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければならないとされています(法第22条本文)。ただし、登記義務者が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでないとされています(同条但書)。
では、登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由とは、どのような状況でしょうか。これには、次の5つが挙げられます。
- 1.不通知
- 2.失効
- 3.失念
- 4.管理上の支障
- 5.円滑な取引阻害のおそれ
■ 各理由の内容
1の不通知については、登記識別情報が通知されなかった場合を指します。
2の失効については、登記識別情報の失効の申出に基づき、登記識別情報が失効した場合を指します。
3の失念については、登記識別情報を失念した場合(具体的には、識別情報通知書の紛失等)を指します。
4の管理上の支障については、登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管理する上で支障が生ずることとなる場合を指します。
5の円滑な取引阻害のおそれについては、登記識別情報を提供したとすれば当該申請に係る不動産の取引を円滑に行うことができないおそれがある場合を指します。
■ 管理上の支障と円滑な取引阻害のおそれ
このうち、4と5に関しては、平成20年1月15日に追加されたものですが、4については、たとえば、土地を分筆登記した場合でも、新たに識別情報通知は通知されないため、分筆後の各土地の登記識別情報は、いずれも分筆前の登記識別情報と同一のものとなります。
従って、この場合、分筆後の各土地の一部につき、抵当権等担保権の抹消登記や、第三者への所有権の移転登記をする際、対象となる土地以外の土地に関する登記識別情報も判明してしまう事態となり、適切に管理する上で支障が生ずることになります。
また、5については、登記識別情報の存在が、円滑な不動産取引の阻害要因となる場合があります。具体的には、登記識別情報の有効性の検証作業が困難である場合や、登記識別情報通知書のシールがうまく剥がれず、シール下の記号を判読できない場合等が考えられます。また、特に多数の登記識別情報の提供を要する場合に、オンライン申請の際に作成する登記識別情報提供様式の作成に手間がかかることもこの理由の一つとされています。
■ 実務上の対応
これらの理由により登記識別情報を提供することができないときは、登記官による事前通知制度、又は資格者代理人による本人確認情報制度、公証人による認証制度のいずれかを利用することになります(法第23条参照)。
なお、現在の実務では、登記識別情報を提供できない場面において、資格者代理人による本人確認情報の提供が利用されることが多く、不動産の売買や相続の場面でも重要な論点になります。
■ 参考文献・補足
参考文献 「全訂Q&A 不動産登記オンライン申請の実務(日本司法書士連合会 編)」
※上記は、執筆時点(2008年)での情報です。実際の事例に関しては、管轄の法務局、又は登記申請を担当する専門家へお尋ねください。







