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平成31年3月作成

家族信託において委託者が複数いる場合の検討事項〜登記申請編〜

複数の委託者のうちの一部の者を受託者とする信託の登記について

法務省民事局は平成30年12月18日付で各地方法務局長宛に下記通知を発しました。この通知は信託登記の実務上、非常に興味深い内容となっております。

法務省民二第760号法務省民事局民事第二課長通知(平成30年12月18日付)

「複数の委託者のうちの一部の者を受託者とする信託の登記について(通知)」

照会内容
委託者を甲及び乙,受託者を乙,受益者を甲及び乙,信託財産を甲及び乙が共有する不動産とし,当該不動産の全体を一体として管理又は処分等をすべき旨の信託契約をしたとして,甲及び乙を所有権の登記名義人とする当該不動産について,当該信託を登記原因とし,共有者全員持分全部移転及び信託を登記の目的とする登記の申請がされました。
 この信託は,受託者以外の者(甲)が有する財産の管理又は処分等がその内容に含まれていることから,いわゆる自己信託(信託法(平成18年法律第108号)第3条第3号)には直ちに該当せず,信託契約(同条第1号)によるものとして,共有者全員持分全部移転及び信託の登記の方法により登記をすることが相当であると考えられるため,他に却下事由がない限り,当該申請に基づく登記をすることができると考えますが,いささか疑義がありますので照会します。


回答
意見のとおり取り扱われて差し支えなし。


※下線につき管理人

委託者複数の場合の従来の不動産登記実務の対応は

公証役場の対応について、たとえば、A・B・Cが共有する不動産につき、委託者をA・B・C、受託者をAとする一の信託契約公正証書の作成が可能であったのか否か、詳しくはわかりませんが、一の契約で作成できたとしても、従来の登記実務では、委託者Aの供する信託財産については実質「自己信託」(信託法§3B)と判断されたため、登記手続の局面では、次の@Aの申請が必要だったと考えます。


※実際の登記申請において、以前、横浜の某登記所へこの事例を照会した際、下記登記申請を要するとの回答がありました。
申請すべき登記内容
@登記の目的:BC持分全部移転及び信託
 原   因:平成 年 月 日信託
 登記権利者 A
 登記義務者 B・C
 信託目録に記載すべき情報 
〜委託者B・C/受託者A/受益者B・C<持分割合省略>〜 

A登記の目的:信託財産となった旨の登記及び信託
 原   因:平成 年 月 日自己信託
 申 請 人:A
 信託目録に記載すべき情報
 〜委託者A/受託者A/受益者A(※)〜

(※)受託者=受益者の状態が一年間継続すると信託は終了します。(信託法§163A)

委託者複数の場合の今後の不動産登記実務の扱いは

当事者とすると、上記は全体で一つの契約信託(信託法§3@)と解釈するのが自然ですから、一部を自己信託とする登記には違和感があります。これに関し、「概説新信託法(著 村松秀樹 他)」では、委託者が受託者となっていない場合には、自己信託ではなく、契約信託の類型に含まれるというべきであるとしています(P10【自己信託の法律行為としての性質】)。

いずれにせよ、上記通知によって、自己信託とする登記申請は不要となり、今後は以下の登記申請で足りると考えます。


申請すべき登記内容
登記の目的:共有者全員持分全部移転及び信託
原   因:平成 年 月 日信託
登記権利者 A
登記義務者 A・B・C
信託目録に記載すべき情報 
〜委託者A・B・C/受託者A/受益者A・B・C <持分割合省略>〜 

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