自社株評価が60年ぶりに変わる?
事業承継は「株価対策」から「企業価値と承継設計」の時代へ
会社を経営している方にとって、自社株は少し特殊な財産です。
上場株式のように市場で日々売買されているわけではありませんが、相続が発生すれば、
その株式にも相続税評価額を付けなければなりません。
そして会社が成長し、利益や内部留保が積み上がっていくほど、
「会社を大きく育てた結果、自社株の相続税が高くなる」
という問題が生じます。
この非上場株式の評価方法について、現在、約60年ぶりともいえる大きな見直しが
検討されています。
今回は、自社株評価の見直しを入り口に、これからの事業承継について
考えてみたいと思います。
このページでわかること
・非上場株式の評価方法が約60年ぶりに見直される見通しであること
・新しく検討されている「残余利益方式」の考え方
・優良企業ほど自社株の評価額が上がる可能性があること
・これからの事業承継で問われる3つの視点(誰に・いつ・どのような形で)
■ 非上場株式の評価方法〜会社規模で3パターン〜
現在、非上場株式については、会社の規模などに応じて評価方法が分かれています。
非上場株式の評価方法
- 大会社:同じような業種の上場会社の株価などを参考にする「類似業種比準方式」
- 小会社:会社が保有する資産や負債をもとに計算する「純資産価額方式」
- 中間の会社:両者を組み合わせた「併用方式」
長年使われてきた制度ですが、会社規模や評価方式の違いによって評価額に大きな差が生じることや、制度を利用して意図的に株価を圧縮するスキームなども問題となってきました。
そこで国税庁では、非上場株式の評価方法そのものを見直す議論が進められています。
■ 新たに検討される「残余利益方式」とは
今回検討されている新しい考え方で興味深いのは、類似する上場会社の株価と比較するのではなく、その会社自身が持っている純資産と、将来利益を生み出す力から株式価値を考えようとしている点です。具体的には、会社の簿価純資産を基礎として、過去の利益などから今後一定期間の収益力を反映させる方式が検討されています。
残余利益方式
2026年8月19日 日経記事から
〜新ルール案は企業の直前期末の純資産に今後5年間で見込まれる収益力を考慮し、一定の係数を掛けて求める。5年間の利益は過去5年間の平均額などから算定し、マイナスの場合を含む。〜
つまり、新たに検討されている「残余利益方式」は、会社に蓄積された純資産だけでなく、その会社が将来利益を生み出す力も株式評価に反映させようとするものと言えます。
優良企業ほど自社株評価が高くなる可能性
計算式のイメージ
(簿価純資産額+残余利益×5年分)×一定の係数
この式が示す通り、将来の収益力(残余利益)が高い会社ほど評価額は上がりやすくなります。「良い会社をつくったからこそ、承継する株式の価値も高くなる」——これが、事業承継特有の難しさです。
残余利益方式で変わる事業承継対策の新常識
自社株の評価が会社の収益力をより反映する方向へ変わるとしたら、「株価をどう下げるか」だけを考えていては、事業承継はうまく進みません。
大切なのは、
・誰に経営を任せるのか
・いつ株式を渡すのか
この2つをどんな形で法的に設計するかです。
例えば、創業者が自社株の大半を持っていて、後継者は長男、というケースを考えてみましょう。
創業者としては、元気なうちから、会社の経営を少しずつ長男に任せていきたい。でも、株式そのものをすぐに渡すのはまだ早い ―多くの経営者がこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。
ここでポイントになるのが、「経営を任せる」と「株式そのものを渡す」の2つは、必ずしも同時に行う必要はないということです。むしろ、それぞれのタイミングを分けて設計できるかどうかが、これからの事業承継のカギになります。
そして、この設計を可能にするのが、自社株を活用した民事信託
です。次のページでは、その具体的な仕組みを見ていきましょう。
自社株信託で「経営権」と「配当による生活保障」を分ける事業承継の事例
※本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。非上場株式の評価方法の見直しは現在も国税庁の有識者会議で議論が続いており、内容は今後変更される可能性があります。









