特別養子縁組をした場合の子の戸籍の編製について
質問
特別養子縁組をした場合、子の戸籍はどのように編製されていくのでしょうか。
回答及び解説
民法で規定されている特別養子縁組制度は、昭和63年1月1日から施行されたものですが、通常の養子縁組(普通養子)と比較した場合の大きな特徴として、以下の4つがあります。
第一、その成立が普通養子が契約として構成されているのに対し、特別養子縁組は家庭裁判所の認可審判による官庁宣言(官庁決定)方式であること。
第二、普通養子が実方・養方双方との関係を保持するに対し、特別養子縁組が成立すると、実方との法律上の親子関係は完全に断絶される制度であること。
第三、原則として離縁が認められない制度であること。
第四、戸籍の記載、操作が特殊な編製であること。
以下、第四について解説します。特別養子縁組が行われた場合、まず、特別養子となった子は実親の戸籍から除かれ、単独の新戸籍が養親の氏で実方の本籍地につくられます(新戸籍の編製)。次いで、その新戸籍から養親の戸籍へ入籍させられます(単独の新戸籍は除籍となります)。
入籍した養方戸籍の子の欄には、養父母欄、養子欄は設けられず、実父母、実子として表示をするといった特別の配慮がなされます。
なお、特別養子縁組は、夫婦共同縁組が大原則となりますが、これは、子の教育、福祉に十分配慮するという第一義的理由の他、戸籍上の親権者が単身者であると、父母欄の一方が空白となり、実子と同様の自然な記載が出来なくなるといった理由が挙げられます。
以上です。
※本記事は2014年時点での制度をもとに執筆したものです。制度改正等が行われている可能性があるため、最新情報は法務省等の公的機関サイトをご確認ください。
※本記事は制度の概要を紹介するものであり、個別のケースについてのご質問、ご相談には応じかねますので、ご了承ください。
(後記)
余談ですが、以前NHKのある報道番組で特別養子縁組の現状についての報道がなされていました。そこでは、養子縁組斡旋事業者が、子の出生前から養親候補者を募り、子の出生後は実母との面談も授乳も行わず、直ちに子を養親候補者へ引き渡すといったもので、個人的には強い印象を受けました。
日本の法律では、特別養子となる者の上限年齢(原則6歳まで)の規制はあっても、養子縁組をいつからできるのかについては規制がないため、このような状況が発生するものと考えられます。
参考文献
- 判例民法9「親族」
- 相続における戸籍の見方と登記実務
その他参考
- 民法817条の7
(子の利益のための特別の必要性)
特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
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最決平成19年03月23日 第61巻2号619頁 裁判要旨(一部省略)
女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合においても,出生した子の母は,その子を懐胎し出産した女性であり,出生した子とその子を懐胎,出産していない女性との間には,その女性が卵子を提供していたとしても,母子関係の成立は認められない。
※本件子らと相手方らとの間に、特別養子縁組を成立させる余地は十分にあるとする補足意見あり
判例リンク