同時死亡の推定とは?子のない夫婦の相続リスクと対策【司法書士解説】|戸塚区・泉区・栄区の不動産登記や相続手続きは、司法書士安西総合事務所にお任せください。

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相続の始まり〜同時死亡の推定とは?〜
―子のない夫婦の相続リスクと対策

ある老夫婦が、同じ日に相次いで亡くなりました。書類に記された死亡時刻は、わずか「40分」の差。だが、この差が遺族らの間で、相続をめぐる裁判へと発展しました。争点となったのは、夫婦の「死亡の順番」。裁判所はどう判断したのか。


先日のある新聞記事によると、この老夫婦には子どもがいませんでした。夫には兄が、妻には妹がいて、夫婦それぞれに不動産などの財産がありました。病気で入院していた夫が、ある夜、病院で亡くなります。同じ日の夜、自宅にいた妻も倒れ、夫と同じ病院に搬送され、そのまま亡くなりました。死亡診断書には、妻が「午後10時10分」、夫が「午後10時49分」と記載されており、書類の上では「妻が先、その約40分後に夫が死亡」という形になります。

死亡の順番で何が変わるのか

子どものいない夫婦の一方が亡くなった場合、その人の法定相続人は「配偶者」と「兄弟姉妹」です。法定相続分は配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1です。診断書どおり「妻が先、40分後に夫が死亡」とすると、夫が亡くなった時点では「夫の死亡の瞬間に妻は生きていた。」と評価されるため、妻は夫の相続人になります。


パターンA:

妻→夫の順で死亡したと扱われた場合


夫の財産 4,000万円

妻   :3,000万円(法定相続分 3/4)
夫の兄弟:1,000万円(法定相続分 1/4)

妻が受け取った3,000万円は、その後の妻の相続で妻の妹に流れていきます。結果として、夫の財産の大半が妻側の親族に渡ることになります。


パターンB:

夫婦が「同時に死亡した」と推定された場合(民法32条の2)


夫の財産 4,000万円

妻   :0円(相続人にならない)
夫の兄弟:4,000万円(全額)

同じ4,000万円でも、「40分の差がある」と扱われるか、「同時死亡」と扱われるかで、夫の財産の行き先がまったく変わってしまうのです。

■ 裁判所の判断:「同時死亡の推定」とは

この事案では、遺族が「診断書の時刻が実際の死亡時刻と一致しないのではないか。」と疑問を持ち、裁判が起こされました。


一般的に、医師が作成する死亡診断書の「死亡時刻」は、必ずしも「心臓が止まった瞬間」を正確に示しているとは限りません。医師や家族の立ち会いを待ってから死亡確認をするケースや、救急搬送の現場では、記録される時刻と実際の死亡にズレが生じることがあります。


今回の裁判では、カルテや看護記録、救急隊の活動記録なども総合的に検討した結果、「夫婦のどちらが先に亡くなったかを確定することはできない」と判断しました。


そこで適用されたのが、民法32条の2が定める「同時死亡の推定」です。数人が死亡した場合に、死亡の先後を確認できないときは「同時に死亡したものと推定する」と定めたルールです。相続では、「被相続人が亡くなった時点で相続人が生きていること」が前提になります(同時存在の原則)。誰が先か決められない場合に「同時死亡」と扱うことで、相続関係を整理できるようにしているのです。


その結果、夫婦は互いに相続せず、夫の財産はすべて夫の兄へ、妻の財産はすべて妻の妹へ、それぞれ直接承継されることになりました。

生前にできる相続対策
■遺言・生前贈与・家族信託

「同時死亡の推定」が問題になるのは、交通事故、火災、災害など、家族が同じ日・同じ状況で亡くなる場面です。頻繁にあることではありませんが、特に子どものいない夫婦や再婚同士の夫婦では、死亡の順番によって「どちら側の親族に財産が流れるか」が大きく変わるため、注意が必要です。


1.✅遺言書

「最終的に誰に、何を、どのくらい渡したいか」を遺言で明確にしておけば、死亡の順番や同時死亡の推定に結果が左右される場面をかなり減らせます。公正証書遺言であれば偽造・紛失リスクも防げます。


2.✅生前贈与

一定の財産をあらかじめ特定の親族に移しておくことで、夫婦の死亡順によって財産の行き先が変わるリスクを抑えることができます。具体的には、贈与税の基礎控除(年110万円)を毎年活用する方法のほか、婚姻期間20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与特例や、直系の子へ贈与する際の相続時精算課税制度の利用などが考えられます。


3.✅ 民事信託(家族信託)

「自分が亡くなった後はまず配偶者に、配偶者が亡くなった後は特定の親族や団体に」という"二段階・三段階構え"の承継設計も可能です。「どちらが先でも、最終的にはこの人に渡したい」という意図を、信託を活用することで、法律上の仕組みとして形にできます。


「うちはこのままで大丈夫?」と思ったら

子どものいないご夫婦や再婚同士のご夫婦、きょうだい間のトラブルを避けたい方からのご相談を多くお受けしています。遺言・生前贈与・家族信託を組み合わせた相続設計について、お気軽にご相談ください。


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