附属建物(地下車庫)を残した滅失登記は可能か?横浜地方法務局の見解と留意点|戸塚区・泉区・栄区の不動産登記や相続手続きは、司法書士安西総合事務所にお任せください。

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地下車庫が残る場合の「建物滅失登記」の可否

不動産決済や建替の現場で、傾斜地を利用した「地下車庫」が附属建物として
登記されているケースはよく見ます。
傾斜地が特に多い横浜・戸塚エリアなどでは、
「地下車庫を附属建物として登記したまま、母屋(主たる建物)だけを取り壊す」
というケースは少なくありません。


この際、主たる建物(母屋)のみを取り壊し、車庫を残した状態で
「建物滅失登記」を申請できるかどうかが、
実務上の大きな分かれ道となります。


これまでは残存する車庫を含めて、現場判断で行われてきた
「建物滅失登記」の運用に対し、
平成30年に行われた神奈川県土地家屋調査士会と横浜地方法務局との協議において、
少し気になる見解が示されましたのでここで触れておきます。

地下車庫は主たる建物になり得るのか

協議結果:
現存する附属建物を主たる建物とする表題部の変更登記をする取り扱いに統一


協議結果によれば、以下の通りの取扱いが示されています。


  1. 物理的存続を重視する判断
    附属建物である車庫が物理的に存在している場合、
    主たる建物が取り壊されたからといって、建物全体を滅失したものとして取り扱うべきではない。

  2. 申請すべきは「表題部の変更の登記」
    この場合、登記記録を閉鎖する「滅失登記」は相当ではなく、
    現存する附属建物を「主たる建物」とする表題部の変更の登記を申請する取扱いとする。

つまり、車庫が残っている以上、「建物滅失登記」で登記記録を閉じることは認められず、
車庫を「主たる建物」に格上げする変更登記が必要であるという見解です。


これまで滅失登記で処理してきたケースも多いかと思いますが、
これからは車庫を「登記上」、残す必要がある扱いになりました。


実はここに、後のトラブルに繋がりかねない大きな落とし穴が潜んでいるように思えます。

取引実務における登記のデッドロックのおそれ

実務家が直面する「3つの問題点」


  1. ・変更の委任状をどう取り付けるのか

    取引実務では、決済時に、売主から「建物滅失登記」の委任状をもらうことがあります。これは、売買の対象となっている建物の登記は売主名義のままとし、建物解体後、売主名義のまま滅失登記を申請するといった実務上の手法です。
    しかし、法務局から「これは滅失ではなく表題部変更である。」と判断された場合、手元の委任状では対応できず、引渡し後に再度売主から委任状を徴求しなければならない事態に陥るかもしれません。

  2. ・売主名義の「車庫」が亡霊のように残るリスク

    もっと厄介なのは、土地の所有権が買主(建売業者等)に移転した後も、登記上、「主たる建物となった車庫」が売主名義のまま残ってしまいます。
    「後で新築建物と一緒に表題登記すればいい。」という従来のやり方が通用しなくなると、買主の土地の上に売主名義の建物が存続し続けるという、権利関係が極めて不安定な状態が生じます。
    なお、これを解消するには、主たる建物になった車庫を売主から買主へ改めて所有権移転登記を申請する必要がありますが、この手法は実務では極めてハードルが高いといえます。
    また、仮にこのハードルをクリアしたとしても、次にその土地に新築建物を建築した場合に、通常は、最終取得者(エンド)名義で表題登記を完成させますが、当該車庫と新築建物をどのように「登記上一体化」させるのか、複数の登記手続きを検討する必要があります。

  3. ・「主たる建物」の要件を満たすのかという疑問

    そもそも、「従属的な地下車庫は単独で主たる建物になり得ないのではないか。」という本質的な疑問を感じます。
    本見解として、「残存する以上は滅失登記できない。」とされている以上、実務家は「主たる建物の要件を満たさないような建物であっても、主たる建物として登記する。」といった違和感(?)を抱きながらの対応を迫られることになりそうです【私見】。

まとめ:この取扱いはどこまで厳格なのか?

この取扱いは、あくまで横浜地方法務局管内での協議結果ですが、
他の管轄でも同様の判断がなされるかは不透明です。
また、車庫の改修状況や一体性の喪失をどう説明するかによって、
滅失登記申請が認められる余地があるようにも思えます。


従来のように、不動産売買の取引にあたり、関係者から、
「建物は決済後に取り壊しだから、滅失の委任状も用意してください。」
と言われても、附属建物の存否を慎重に確認した方がよさそうです。


これから地下車庫付き建物の滅失・売買案件を扱う関係者の方は、ご注意ください。




(注釈:本記事の根拠について)
本記事の内容は、「平成30年度表示登記適正処理委員会協議結果」に基づいています。最新の運用や、他法務局での取扱いについては、必ず個別案件ごとに確認が必要です。また、個別の実務上の判断(改修を伴う場合の滅失の可否等)については、当職の経験および会員間での意見交換に基づくものであり、公式な手続きを保証するものではありません。

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