相続放棄をしても固定資産税は払う?
―納税通知が届いたときの考え方
相続放棄をしたにもかかわらず、市区町村から固定資産税の納税通知書が届いた、というご相談があります。「放棄したのになぜ?」と思いますが、固定資産税には相続とは別のルールがあり、放棄のタイミングによっては支払いを免れないケースがあります。
この記事では、相続放棄と固定資産税の関係を整理したうえで、放棄した後の固定資産税の支払い義務と、放棄する前に固定資産税を払ったときの影響について確認します。
固定資産税は「1月1日時点の所有者」に課税される
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)に固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます(地方税法第343条)。これを台帳課税主義といいます。
相続放棄をすると、民法上は「初めから相続人でなかった」とみなされます(民法939条)。しかし固定資産税については、民法上の効果と別に、地方税法のルールが優先されます。1月1日時点で課税台帳に所有者として登録されていた以上、その後に相続放棄が受理されたとしても、その年度の納税義務は消えない、というのが実務上の取り扱いです。
固定資産税の課税は相続登記の有無とは関係がありません。固定資産課税台帳に登録される所有者に相続が発生し、相続登記が未了であっても、市区町村は相続人を調査して課税台帳に登録するため、相続登記が完了していなくても、相続人に納税通知が届くことがあります。
1月1日をまたいで放棄した場合、納税義務は残る
たとえば、被相続人が12月に亡くなり、翌年1月以降に相続放棄が受理された場合、1月1日時点では相続人として課税台帳に登録された状態にあります。この場合、その年度の固定資産税については支払い義務が生じます。
一方、被相続人が亡くなった年の12月31日までに相続放棄が受理されていれば、翌年1月1日時点では相続人の地位を離れているため、翌年度以降の固定資産税は原則として課税されません。
【参考】横浜地方裁判所 平成12年2月21日判決では、相続放棄後も固定資産税の納税義務が消滅しないとした事例があります。台帳課税主義の観点から、民法上の放棄の効果が固定資産税の課税関係に直接影響しないことが示されています。
■ 放棄する前に固定資産税を払ってしまったら
では、相続放棄を検討中に、固定資産税の納税通知が届いて支払ってしまった、というケースはどう考えればいいでしょうか。この場合、誰のお金から払ったかがポイントになります。
被相続人名義の預金口座など、相続財産の中から支払った場合には、相続財産を処分した行為として法定単純承認にあたり、後の相続放棄の可否に影響を与える可能性があります(民法921条1号)。これは固定資産税に限らず、相続財産を動かす場面に共通する論点のため、注意が必要です。
一方、相続人自身の固有財産(自分のお金)から支払った場合には、相続財産の処分には当たらないため、相続放棄への影響はないとする裁判例があります。



