不動産を買ったのに大家にならない?
〜賃貸人の地位が移転しない実務の特徴〜
不動産を買ったのに、大家にはならない。一
一見すると不思議な話ですが、現在の不動産投資では珍しいことではありません。
最近では、不動産を「利用するもの」ではなく、「収益を生む金融商品」として保有するケースが増えています。この変化に合わせて、民法も改正を重ねてきました。
以下、詳しく見ていきたいと思います。
一見すると不思議な話ですが、現在の不動産投資では珍しいことではありません。
最近では、不動産を「利用するもの」ではなく、「収益を生む金融商品」として保有するケースが増えています。この変化に合わせて、民法も改正を重ねてきました。
以下、詳しく見ていきたいと思います。
■ 所有者=賃貸人が原則
収益不動産を購入すれば、当然にその物件の「賃貸人」になる。実際、民法の原則では、収益不動産が売買されると賃貸人の地位も当然に買主へ移転し、敷金返還義務なども含めて承継されるとされてきました。
しかし、不動産投資といった金融ファイナンスからみると、この扱いが非効率になる場面があります。
不動産小口化商品や収益不動産投資においては、購入者である投資家が自ら物件の賃貸・管理を行うことは想定されていません。
つまり、投資家に「賃貸人」としての法的地位は必要ではなく、ここに民法の原則と実務のズレが生じていました。
しかし、不動産投資といった金融ファイナンスからみると、この扱いが非効率になる場面があります。
不動産小口化商品や収益不動産投資においては、購入者である投資家が自ら物件の賃貸・管理を行うことは想定されていません。
つまり、投資家に「賃貸人」としての法的地位は必要ではなく、ここに民法の原則と実務のズレが生じていました。
所有者が変われば賃貸人も変わる。
民法の原則では、不動産に賃借人が存在する場合、その不動産が売却されると、賃貸人の地位は買主に移転します。これは賃借人保護の観点から確立された重要なルールです。
借地借家法のもとでは、借地であれば建物の登記、借家であれば引渡しによって、賃借人は新所有者に対しても賃借権を主張できます。
その結果、賃貸借契約はそのまま維持され、賃貸人の地位も自動的に新所有者へ引き継がれます。
この仕組みは、かつて問題となった「売買による賃借人排除」を防ぐために整備されてきたものです。
原則のイメージ
新所有者=賃貸人
借地借家法のもとでは、借地であれば建物の登記、借家であれば引渡しによって、賃借人は新所有者に対しても賃借権を主張できます。
その結果、賃貸借契約はそのまま維持され、賃貸人の地位も自動的に新所有者へ引き継がれます。
この仕組みは、かつて問題となった「売買による賃借人排除」を防ぐために整備されてきたものです。
原則のイメージ
新所有者=賃貸人
民法605条の2「賃貸人の地位の非承継の定め」
ところが、現代の不動産取引は大きく様変わりしています。
不動産は単なる「利用する資産」ではなく、「収益を生む金融商品」として扱われるようになりました。
たとえば不動産小口化商品では、多数の投資家が所有権を持ちながら、実際の賃貸・管理は従来の事業者や運営会社が担います。
このような構造において、すべての投資家が賃貸人としての義務(修繕や敷金返還義務など)を負うとすれば、実務的にもリスク管理の面でも極めて非効率です。
そこで、2017年の民法改正により、次のような例外が認められました。
第605条の2【不動産の賃貸人たる地位の移転】
A・・・不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。
これは端的に言うと、
「所有者(投資家)」と「賃貸人(原所有者、運営主体)」を分離することを認めた規定です。
イメージ
・所有権は投資家へ移転する。
・しかし賃貸人としての地位は従来の原所有者(事業者)に留まる。
不動産は単なる「利用する資産」ではなく、「収益を生む金融商品」として扱われるようになりました。
たとえば不動産小口化商品では、多数の投資家が所有権を持ちながら、実際の賃貸・管理は従来の事業者や運営会社が担います。
このような構造において、すべての投資家が賃貸人としての義務(修繕や敷金返還義務など)を負うとすれば、実務的にもリスク管理の面でも極めて非効率です。
そこで、2017年の民法改正により、次のような例外が認められました。
第605条の2【不動産の賃貸人たる地位の移転】
A・・・不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。
これは端的に言うと、
「所有者(投資家)」と「賃貸人(原所有者、運営主体)」を分離することを認めた規定です。
イメージ
所有者≠賃貸人
・所有権は投資家へ移転する。
・しかし賃貸人としての地位は従来の原所有者(事業者)に留まる。
■ 法律は、実務の積み重ねから生まれる。
この発想は、近時の金融法制とも共通しています。
たとえば、2026年5月26日に新たに施行された「企業価値担保権」においては、
個別資産ではなく、「事業全体の収益力」に着目して担保を構成します。
不動産分野においても同様に、「モノの所有」ではなく
「キャッシュフローの帰属」を基準に制度が再設計されつつあるといえます。
賃貸人の地位は本来、所有権と一体として移転するものでした。
しかし現在では、不動産の保有形態や投資スキームの多様化により、
「所有者=賃貸人」という前提自体が見直されています。
所有と運営は分離し、利益の帰属と責任の所在も分離する。
これが現代の不動産投資の基本的な考え方といえますが、
先の民法改正は、こういった実務の実態に合わせた制度の再構築といえるでしょう。
たとえば、2026年5月26日に新たに施行された「企業価値担保権」においては、
個別資産ではなく、「事業全体の収益力」に着目して担保を構成します。
不動産分野においても同様に、「モノの所有」ではなく
「キャッシュフローの帰属」を基準に制度が再設計されつつあるといえます。
賃貸人の地位は本来、所有権と一体として移転するものでした。
しかし現在では、不動産の保有形態や投資スキームの多様化により、
「所有者=賃貸人」という前提自体が見直されています。
所有と運営は分離し、利益の帰属と責任の所在も分離する。
これが現代の不動産投資の基本的な考え方といえますが、
先の民法改正は、こういった実務の実態に合わせた制度の再構築といえるでしょう。



