相続・遺言・遺産承継

債務者の変更登記

テーマ

連帯債務者の一人に相続が発生した場合の抵当権の債務者変更登記


質問
 抵当権の連帯債務者がA及びBとなっていますが、Aが亡くなりました。Aの法定相続人はBとCですが、債権者と協議の結果、Aの債務は、Bがすべて引き受けることになりました。この場合、抵当権の変更登記手続きはどのようになるのでしょうか?

回答

 実体に合わせて、以下の二つの抵当権の変更登記手続きを行う必要があると考えます。

<一件目>
(一部省略)
原    因  平成○年○月○日 連帯債務者Aの相続
変更後の事項  連帯債務者   B
                C

<二件目>
(一部省略)
原    因  平成○年△月△日 連帯債務者Cの免責的債務引受
変更後の事項  連帯債務者   B


解説

 金銭債務その他可分債務の相続の場合について、最高裁は、「法律上、当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する」と判示しています。これは連帯債務者の一人が死亡した場合も同様で、連帯債務の相続においても法律上当然分割されるとした上で、他方の連帯債務者とその法定相続人との間に連帯債務関係が成立するとしています。
 質問事例のように、元々の連帯債務者がA・Bであり、Aに相続が発生し、相続人BがAの相続債務を引き受けた場合であっても、他方の連帯債務(元々のBの債務)にはなんら影響が及ぶわけではありません。連帯債務における債務はそれぞれが独立した債務であって、相続等によって連帯債務がすべて同一人に帰属したとしても、元々の債務と、他の連帯債務者である被相続人から相続した債務とが併存している場合には、変更登記の局面においても、「債務者B」とはならず、「連帯債務者B」として登記することになります。

以上です。



 参考文献 登記インターネット2巻6号

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参考先例
 共同相続人の1人の債務引受による抵当権の変更登記の前提として共同相続人全員の債務承継による抵当権の変更登記の要否
《抵当権変更・更正(登記事項の変更・更正)》
 共同相続人の1人が抵当権付債務を引き受けた場合、その引受が遺産分割によるものであるときは、共同相続人全員の債務承継(相続)による抵当権の変更登記を経ることなく、直接当該共同相続人の1人の債務承継(相続)による抵当権の変更登記をすることができるが、当該債務の引受が遺産分割の協議によるものでないときは、相続により債務者を共同相続人の全員とする抵当権の変更登記をした上で、当該債務引受による抵当権の変更登記をなすべきである。
(昭33.5.10、民事甲第964号民事局長心得通達・先例集追U267頁、登研127号36頁〔解説付〕、月報13巻6号128頁)

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