相続・遺言・遺産承継

遺産分割と登記


テーマ

「包括受遺者間で遺産分割協議をした場合の所有権の移転の登記について」



質問

 法定相続人A,B及びCのうち、AとBに全ての財産を遺贈する旨の遺言がされ、その遺言が効力を生じたあとに、AとBで遺産分割協議をした結果、Aが特定の不動産を取得する旨の合意が成立しました。取得相続人Aは、この不動産について被相続人の名義から直接、A名義への所有権の移転の登記をすることはできますか。

回答

 被相続人から直接A名義とすることはできず、まず、遺贈を原因としてA,B名義への所有権の移転の登記をした後、遺産分割を原因としてAへのB持分全部移転登記をするのが相当と考えます(登記研究571号)。

解説

 被相続人名義からの所有権の移転登記については、その原因が、相続と遺贈とでは、大きな違いがあります。
 まず、包括遺贈の場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)とされていますが、相続と異なり、遺言者の意思表示による処分であることや、第三者においてその存在を覚知することは困難であること等から、包括受遺者が物件の取得を第三者に対抗するためには、必ず登記を要するものとされています。なお、遺産分割による物件の取得(法定相続分を超える部分についての取得)を第三者に対抗する場合も、遺贈と同様、登記が必要になります。対抗要件として登記を要する二つの物件変動(遺贈と遺産分割)を、一つの登記手続きで済ませることは、中間省略登記を認めることになり、相当ではないと考えられています。
 次に、登記手続の面から検討しますと、遺贈による所有権の移転の登記は、相続の場合の単独申請と異なり、受遺者と遺言執行者又は相続人との共同申請によるものとされています。これに関し、遺言執行者が登記義務者となる場合における遺言執行の代理権については、遺言者の最終処分意思の実現(履行)が、遺言者の権限と解されているところ、遺産分割協議の結果は、遺言者の最終処分意思ではなく、協議者の意思であるので、例えば、包括受遺者間の遺産分割協議後の登記について、遺言執行者が特定の不動産の持分を失う者を代理することは、権限外の行為と考えられます。
 以上のことから、本件のような事例では、いったん、遺贈を原因とするA,B名義への所有権の移転の登記をし、その上で、遺産分割を原因としてBからAへのB持分全部移転登記をするのが相当と考えます。

以上です。

※上記回答は、平成7年当時の登記研究を参考にしたものです。実際の事例に当たっては、必ず管轄の登記所へご相談ください。

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参考
共同相続が開始したあと、共同相続人間で遺産分割協議をした結果、特定の相続人が不動産を取得する旨の合意が成立した場合には、相続による共同相続人名義の登記を経由せず、直接、取得者名義へ所有権の移転の登記ができるものとされています(昭和19年通達)。
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